01.緑道は人工の道だから快適


 NT建設が軌道にのる前に、チベットには失礼な比喩ですが「横浜のチベット」と言われたこの地に越してきました。「緑道には詳しいでしょう」と思うかもしれませんが、とんでもない。緑道と自宅は少し離れているし、最近まで車に乗っていたので目に入りません。そんな私ですが、新型コロナ上陸でおびえていた時に「遠くに行かなくても近くに緑道があるじゃない」と閃いたのです。15㎞+周辺をひとりで完歩。

 完歩後に緑道への関心と愛が高まりました。里山と田畑と農家が点在している風景を知っていることもあり、緑道は元の地形を生かしたものと思い込んでいたのです。せせらぎは元からあった小川、樹木は里山や屋敷林に植えてあったもの、池もため池を利用したものだと。ところが、歩いてみると私が知っていた小川は埋め立てられ、里山は削られています。大規模な開発、しかも歩車分離の「ひとに優しい街」を造るには、元の地形を度外視し、削って(切土)盛って(盛土)の工事を繰り返さなければ出来なかった事を、今頃になって気づきました。それがいちばん顕著なのは、開発前に点在していた農家や小宅地の家のほとんどが、移転していることです。

 ハレバレ会で取材を重ねるうちに、今のせせらぎのほとんどは地下水のポンプアップによるものだと判明。計画段階では、山の湧水や小川を利用する予定でしたが、水が思うように流れなかったのです。 季節ごとに衣装を変える樹木は、屋敷林などからの移植はほんの一部で、ほとんどが新しく持ち込まれたと聞きました。

 緑道に関わった業者やデザイナーはたくさんいましたが、その中心を担ったのはランドスケープデザイナーの上野泰さんでした。今なお各地の公園のデザインを手掛けている上野さんのひとことをご紹介します。「港北NTの緑道は、明治神宮の森のようなものですよ。ほとんどが人工です。人工だからこそ美しいし快適なんです」。

(HARUKO記)