マップ制作記

"都筑の緑道のこと、勉強してみよう"の声かけからすべてが始まりました


1. "緑道のこと、勉強してみよう"

... 2020.10.7

 

連日1万歩超えの緑道散歩がコロナ禍での新しい日課になった。都筑区在住30年以上の江幡夫妻にとって、自然の風景よりも、ランドスケープデザインに目が行くのは建築界の出身だから。道のデザイン、石の佇まい、水の流れ・・SNSに緑道の素晴らしい写真をどんどん紹介した。

 

10月のはじめ。万全の感染症対策をして、江幡邸に10名の都筑区民が集まった。緑道の生みの親・川手昭二さんをお招きして、"緑道勉強会"をしようという代表・江幡の声かけだった。まずは自己紹介。年齢も職業もいろいろ。初対面同士も多い。大いに緊張。川手先生の話は、知らない言葉も多くてメモを取るのが精一杯。在住歴の長いメンバーはふむふむ、と質問も飛び出す。難しいながらに、分かったことを断片的につなぐだけでも港北ニュータウンのすごさにワクワクした。

勉強会の終わりに軽く茶話会。「最近、緑道やニュータウンの景観が少し壊れつつある気がする。どうやって守ったらいいだろう」という質問が出た。神奈川県全域に見られるナラ枯れ問題。港北ニュータウンの緑道でもその現象は起きている。大きな土地が分譲され、かつてのゆったりとした緑豊かな戸建の風景も失われつつある。港北ニュータウンというまちづくりにかけた情熱・知恵・思いを聞いた直後だからか、一層に最近の流れに残念さを感じた。先生の答えは、みんなで景観協議会を作って、みんなが動けば良いのだ、と。法律や規定のことは難しくあまりよく理解できなかったけれど、"自分たちで何かができる"ということは10名みんなの心に響いた。そしてこの日、この勉強会を「川手塾」と名づけて、私たちは緑道を守るために活動する仲間になった。

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2. 川手先生と、緑道をハレバレ散歩

... 2021.4~11

 

さあ、春が来た。昨年の秋の「川手塾」から冬の間に、緑道の素晴らしさを伝える"絵地図を再販しよう"と決まった。「緑道ハレバレ会」を発足したものの、猛威を振るうコロナ禍と寒い冬に阻まれて、なかなか活動ができなかった。4月24日、川手先生と一緒に緑道話を聞きながら実際に緑道を歩いて回ることになった。コースは、「センター南駅〜正覚寺〜仲町台駅」(せきれいのみち)。場所の指定は川手先生。なぜ、ここからスタートか。正覚寺の本堂は、港北ニュータウン計画についての最初の住民説明会をした場所なのだそうだ。ここから住民参加の港北ニュータウンがスタートし、緑道構想もこの時に初お披露目された。

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その後、この「先生と一緒にお散歩」のスタイルは、11月まで続く。先生の健脚ぶりにも驚かされたが、時折足を止めて「ここは〜」と始まる開発当時を振り返る川手談義が大変興味深かった。数十年も前に遡る話、若干の記憶違いもあるかもしれないが・・それでも毎回の話に心踊らされ、もっと知りたいと探究心に火がつき、港北NT・緑道の誕生の光景がパズルのピースをはまるように見えてくる。

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3. 松林甫にて、高橋美江さんと初打ち合わせ

... 2021.5.8

 

絵地図制作は、かつての都筑区民であり旧知の高橋美江さんに依頼した。快諾。20年前の絵地図も、都筑区役所から依頼を受けた彼女の作品である。第1回マップ会議が開かれた。美江さんから「絵地図とは」や「絵地図作りに必要な心構え」「ミウラ折り」の仕掛けなどを教わる。みんなでファーストネームで呼び合おう、と美江さんの提案。グッとお互いの距離が近づく。

 

この日の目玉はそれだけではない。川和町の豪商だった中山恒三郎家の敷地内にある、書院「松林甫」で開催されたこと。原則非公開の、横浜の歴史的建造物認定を受けている松林甫である。マップ会議のあと、当主の健さんの案内で書院・庭・店蔵の中などを見せていただいた。何度も頬をつねりたくなるような、興奮、興奮の1日だった。

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4. マップ面作り...マップスリム班

... 2021.10~2022.7

 

美江さんの指導を受けながら、「マップに載せたいスポット」を棚下ろす作業が始まった。絵地図を描くのは美江さんでも、内容を出すのは私たち。自然系・歴史系・アート系・施設・店舗の項目に分け、「KJ法」を使って各人が載せたいものをまずは自由に出し合う。色別のポストイットに書いて拡大版のマップに貼る。そして重複項目を整理し、場所がずれているものは訂正しながら、エクセルに情報を落とし込む作業。

マップ作りは、スポットだけではない。地下鉄は?大通りは?オレンジロード(生活道路)は?トイレは?南コース・北コースを両面にまたがせるか?一面にするか?細かな話し合いを何度も重ねていく。

 出すものを出したらそこから先は一転して、情報の取捨選択作業。特に緑道に詳しいメンバーで「マップスリム班」を作り、ゾーンごとに情報をダイエットしていく。誰かのお気に入りスポットを削る作業は苦しい。できるだけ客観的な視点で議論する。さらにこれは"絵地図"なのだから、このスポットは絵で描いてもらう、ここはアイコンに変える、ここは吹き出しで解説を入れるなど、希望をまとめていく。解説の文章も書く、その文字数も・・何度も推敲してスリム化。ともかくスリム、スリム。

 

美江さんにマップ面情報を渡すまでがマップ面作りの第1章。緑道の全体が見えている私たちと、そこまでは詳しくない美江さん。作業しやすいように工夫した資料の作成、依頼されたファイルを作るために慣れないPC作業に奮闘したことも記録しておきたい。

そして絵地図制作が始まってからの第2章。イラスト起こしのために材料が欲しいと連絡が入ると、現場に走り写真撮影。追加の文章作成など、細かなすり合わせ作業は印刷所への入稿直前まで続いた。

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5. 裏面は自分達で...リメンバー班

... 2022.2~2022.7

 

プロの絵地図師に制作を依頼するということは、それなりに予算がいるということだ。ところが私たちにはその予算が、ない。制作費用を少しでも抑えるためにも、裏面は自分達で制作することにした。建築の専門家もいる、文を書ける人もいる、デザインできる人もいる。そして何よりも緑道のことを一生懸命学んだ自負がある。チームワークがある。プロのライターさんにお願いして、私たちの感動をそこに表現しきれるか。表裏含めての「高橋美江の絵地図」であることは承知しているが、無理を押して承諾してもらった。これは、緑道ハレバレMAPの大きな分岐点だった。

 

美江さんにせっかく承知してもらった以上、美江さんの描く絵地図の魅力を落とすものであってはいけない、読んでよかったと感じてもらえる裏面を作ろうとリメンバー班が結成された。何案ものたたき台を作り、叩きに叩いてブラッシュアップしていく。ハレバレ会らしさを出すか、個を消すべきか。議論する内容は毎回すごく深かった。記事を書くために膨大な資料や論文も読み、緑道のデザインを担当された上野先生に会いに房総半島まで行った。私たちの熱量に対して紙面はあまりに小さく・・そのうちのどれほどを書けただろうかという思いは残るが、満足のいく裏面が作れたと思う。

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6. 販売体制づくり...M班

... 2022.3~

 

M班が結成された。川手先生のお話に感動したところからスタートし、"夢"と"楽しい"をただ無邪気に追いかけて活動してきた素人集団...であったが、高橋デザイン室から正式な見積もりをもらってから事業としていよいよ本気モードである。具体的な販売戦略を立てるとともに、見積もりの交渉・契約、資金調達活動など、一手に引き受けるのがM班。大きな金額が動く重責の仕事、社会人期の長いメンバーが堅実に動いてくれて心強い。発足当時からみんなの中に密かにあった心配がお金のこと。この心配の解消も自分達の進む方向がはっきり見えてきた大切な分岐点となった。

 

大手企業様から大口購入契約を頂戴したことで、みんなの自信がついた。書店や公的機関の売店での販路獲得など、それぞれのメンバーが自分の思いつくところに声をかける。宣伝活動も、あちこちに置いたチラシ1000部はあっという間になくなった。市民が集まるサロンに出向き、マップの紹介をする。他の市民活動団体でもいろいろな活動をしているメンバーの強みが出る。観光庁支援の地域活性プロジェクトとして実現が決まった「都筑ツアー」のガイド役も引き受けることになった。人のつながりのパワーが膨らみ、なんと出没!アド街ック天国(テレビ東京系情報番組)の取材まで受けた。9月1日のMAP発売まで、地道な種まきが続く。

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7. 「緑道ハレバレMAP」完成 !!

... 2022.8.31

 

午前中に、24箱にもなる「緑道ハレバレMAP」の入った段ボールが印刷屋から届く。お昼過ぎ、川手先生もお呼びし、メンバー一同が集まった。早速で箱の開封、MAPを手に取り、ミウラ折りの開き方とアプリの使い方を確認した。そして乾杯!緑道ハレバレMAP制作までの道のりはこれにてゴール。そして、次なるハレバレ会の出発点にもう一度乾杯!祝賀会の後は、明日から販売開始となる本屋や公共施設へそれぞれが納品に向かう。このMAP完売まで、ハレバレ会メンバーは息つく間もないのである。

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